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「透明鳥」

 

ある所に、何の色も持たない鳥が居ました。

色がないのですから、誰にも見えません。

ただ、その泣き声だけは色んな存在に聞こえました。

多くのモノはその声も否定しました。

時には、不思議な現象として扱われました。

 

自分も、誰かに見て欲しい。

ひとりぼっちだった鳥は、そんな理由で色を欲しがりました。

貰えるのなら、どんな色でも構わないと思ってでも。

どんな色であっても。自分のものになるなら。

とても、素敵な色になってしまうだろう。

 

空の青やオレンジ、紫や灰色に黒の色を分けて欲しいと鳥は言った。

しかし、空にその声はただ吸い込まれていくだけでした。

 

海の深い蒼や透き通るような翠、碧の色を分けて欲しいと鳥は鳴きました。

しかし、その声も水面で跳ね返るだけでした。

 

花の色とりどりの色を分けて欲しいと鳥はさえずりました。

しかし、花は何も答えれくれず。

スノードロップは鳥にではなく、雪に色を分けていました。

 

燃え盛る溶岩に色を分けて欲しいと鳥は歌いました。

しかし、ただぱちぱちと火花をあげるだけでした。

 

 

色を求めても求めても、鳥に色が着く事がありませんでした。

 

しかし、不思議な事がありました。

鳥が通った場所には、何も。そう何もなくなっていました。

人も植物も動物も、草も水も大地も空も何もかもがなくなっていました。

鳥と同じように透明になってしまったのです。

 

そして、鳥は気付きました。

どんなに色を食べても食べても、自分には色が着かないと。

それどころか、求めたら他の色をただ奪ってしまうのだと。

やっと、気付きました。

でももう、遅過ぎました。

鳥は本当の意味でひとりぼっちになってしまいました。

 

何もない空虚の中に寂しげな声だけが、いつまでも響いていました。

めでたし、めでたし。

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