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「窓辺の人形」

 

ある所に、街から離れた森の中のある村に人形師の娘が居ました。

その娘は、村の行事や村人に頼まれて人形を作っていました。

どんな人形にも愛情と熱情を込めて、毎回毎回最高の出来になるように。持ち主に愛されるように作っていました。

人形師の娘には、本当の故郷も家族もありませんでした。それでも娘は村そのものを家族として、平穏に日々を過ごしていました。

 

ある日、普段は人がやって来ない村に旅人がやって来ました。若い男性です。

どうやら、近くにいた魔物によって怪我をしたようで、しばらくの間滞在する事になりました。

人形師の娘は、外の世界に普段から興味がありました。そうして、やって来た旅人に外の世界の事を色々話して貰いました。

旅人の怪我が少しずつですが治り始めた時、人形師の娘は旅人に付いて行きたいと言いました。

しかし、旅人も村人も反対しました。

それでも人形師の娘は諦め切れずに武術について、薬学について、魔術についてを猛勉強しました。

旅人が村を出る頃には、外の世界でも通じる程の力を付けていました。

そうして人形師の娘に折れた村人達と旅人は話し合い、再び旅人がこの村にやって来た時にまだ人形師の娘の気持ちが変わっていなければ、一緒に連れて行く事にしました。

そうして、旅人が村を出て行く時に自分に良く似た人形を旅人に渡し、ここにやって来るように約束をしました。

 

数年経ち、旅人は約束通り人形師の娘に良く似た人形を持ってまた、この村にやって来ました。

人形師の娘はあの頃と同じように、旅人に付いて行きたいと言う気持ちは変わっていませんでした、

こうして旅人が増えた瞬間でした。

村を出て行く前に1人で寂しくないように、と人形師の娘は旅人に良く似た人形を作り、窓辺の端に座らせました。

そうして、人形師の娘は旅人と共に外の世界を巡るようになりました。

 

人形師の娘と旅人に良く似た人形2体は、窓の両脇に座っていたのがいつしか寄り添うように窓辺に座り、

人形師の娘の帰りを待っていました

そうして、時折帰って来た人形師の娘に手入れをして貰いいつまでも、村人達からも愛される人形でありました。

 

そうして、時が流れた後にもその窓辺の人形2体はいつまでも寄り添って、

小さな子どもに愛され成長を見守り、成長した子どもに手入れをして貰っていました。

 

めでたし、めでたし

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