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「雪とさよならの話」
ある日大きな音がした、轟音が響いた。
何かが焼ける臭い、つんざくような悲鳴、日常が失われていった。
夢だと信じた。起きればまたいつも通りの退屈で、毎日を繰り返すだけの日に戻れると子どもは願った。
だけど、いつまでもいつまでもその願いは叶いませんでした。
ある日、ふっと静かになりました。悲鳴も轟音も止まりました。
何かが焼ける臭い、パチパチと燃え爆ぜる音、真っ赤に流れる血潮だけは止まってはいませんでした。
そして、静寂の中に雪が降りました。
お父さんだったものに、お母さんだったもの、友達だったもの、全く知らない誰かに深々と包むように、
赤子をあやす母の腕のように優しく雪は降り続けました。
流れる血潮に解けながらも傷を冷やすように。傷みに悼むように雪は降り続けました
子ども達は泣きました、静寂を破るように。それさえも雪は受け入れるように、悼みを和らげるように降り続けました。
そして雪が解けた頃、子ども達は母となり父となりそして子ども達に、昔の話をするのです。
雪が降らないように。大切な人達を喪わないように。
こうして、雪が降る事はなくなりました。
めでたし、めでたし
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